電子部品製造の現場では、工場内の湿度が製品の歩留まりと修理コストを大きく左右します。
湿度が20〜30%まで下がると、静電気による電子部品の破壊やクリームはんだ印刷の不良が増えやすくなるため、工場用加湿器は品質と職場環境の両面で重要な設備投資判断の対象です。
ここでは、電子部品製造において湿度管理が重要な理由や加湿器の選び方に加え、「プリント基板実装・SMT工程」「クリーンルーム(半導体・精密部品)」など、実際の現場における導入事例をまとめました。
電子部品製造といっても、表面実装(SMT)や精密クリーンルーム、組み立て・検査など工程や製品によって求められる湿度条件は異なります。
微細な半導体やチップ部品は、わずかな静電気でも内部回路が破壊(ESD損傷)されるリスクがあり、基板への実装工程では湿度の低下がはんだ印刷の不良を引き起こします。また、静電気によって帯電した部材にホコリが強く付着すると、後からの除去が困難になり不良品の原因になります。
電子部品製造では、極めて厳格かつ繊細な湿度コントロール(一般的には相対湿度40〜50%前後)が求められます。
湿度が低すぎれば静電気による破壊や異物付着を招きますが、逆に高すぎると結露による回路のショートや錆(腐食)といった別の品質トラブルに発展するため注意が必要です。加湿の「質」も重要で、粒径が大きく製品や基板を濡らしてしまうタイプは、ショートや装置の故障リスクを高めてしまいます。
電子部品製造で湿度管理が甘いと、静電気やクリームはんだ印刷のばらつきが発生しやすくなります。
加湿器で工場内を一定湿度に保つことが、不良低減と修理コスト削減の前提条件となります。湿度管理を怠った場合、その影響は歩留まり悪化や再製造コストの増加として跳ね返ってくるため、早めの設備見直しが有効です。
人体アースや導電床は静電気対策の基本ですが、瞬間的な表面電位の上昇までは抑えきれません。
湿度20〜30%の環境では表面電位が高まり、電子部品の破壊リスクが増えます。湿度を一定以上に保つことで、静電気の発生が抑制されます。
クリームはんだ印刷の品質は、はんだペーストの適切な温度と印刷機内の湿度が保たれてはじめて安定します。
温度は空調で管理しやすい一方、湿度は現場の悩みどころとなりやすい領域で、工場用加湿器による補完が必要となります。
目標湿度を45%前後で安定させることで、静電気抑制と印刷品質の両立、修理コスト削減、顧客信頼の獲得が同時に見込めます。企業視点では、ライン全体への品質展開が経営インパクトにつながる点が重要です。
大型の加湿機能付き空調機は、水と電気の消費が大きい割に湿度が45%まで届かないケースが見られます。
工場専用に設計された加湿器は、少ない水と動力で目標湿度を安定させやすく、設備への負担も抑えやすい点が特長です。
加湿空調機から工場用加湿器へ切り替えることで、総消費電力や水使用量が下がる事例が見られます。
空調機器の新設コストを加味しても、長期的には電気代の低減が期待できるため、総ランニングコストの試算が導入判断の軸となります。
では、表面実装、クリーンルーム、組み立て・保管など、環境ごとに異なる加湿の課題を各工場はどのように解決しているのでしょうか。次に実際の導入事例を紹介します。
車載用などの高い信頼性が求められるプリント基板実装工程では、厳格な静電気対策と異物(ホコリ)混入の防止が欠かせません。
ここでは、取引先の厳しい要求水準をクリアし、工程のクリーン化にも成功した「クリーンウェッター®α」の導入事例を解説します。
こちらの電子部品製造会社では、主に高い信頼性が求められる「車載用」のプリント基板実装を手掛けています。近年、取引先からの冬場の静電気対策に対する要求が年々厳格化しており、これらをクリアするための確実な湿度管理体制の構築が急務となっていました。
また、従来の環境では生産設備の上部にうっすらとホコリが付着してしまう課題もあり、静電気による微小チップの吸着エラーや、異物混入による実装不良のリスクをいかに低減し、工程をクリーンに保つかが大きな悩みでした。
複数の加湿方式を比較検討した結果、同社が選んだのはエイワ機工の「クリーンウェッター®α」でした。精密な電子部品や実装マシンが並ぶ現場において、製品を濡らさない「水滴が出ないこと」と、異物対策になる「空気清浄ができること」が大きな決め手となりました。
静電気対策の指定エリアへ2基を導入したところ、冬場でも湿度50%以上を安定して確保できるようになり、取引先の厳しい要求基準をクリアすることに成功。さらに、稼働後は課題だった生産設備へのホコリの付着がほとんどなくなり、工程のクリーン化にも大きく貢献しています。確実な静電気抑制とクリーンな環境づくりの双方を実現した事例です。
SMT(表面実装)工程の現場では、精密機器を濡らさずに静電気を抑制し、はんだ印刷の品質を一定に保てる加湿器が求められます。乾燥による静電気で微小チップの吸着エラーが発生したり、はんだが乾燥して印刷品質が低下したりするためです。
ここではSMT工程に導入された「ドライフォグ加湿システム(AirAKI / AKIMist)」の事例を解説します。
乾燥が激しい季節、こちらの電子部品メーカーのSMTラインでは、発生した静電気が、ICメモリーなどの微細素子に静電破壊(ESD損傷)を引き起こし、品質や歩留まりに深刻な悪影響を及ぼしていました。
また、湿度の低下にともないクリームはんだの溶剤が揮発し、メタルマスクへの充填性が悪化。印刷品質のばらつきや、微小チップの吸着エラー(チップ飛び)によるチョコ停が発生し、リワークコストやエネルギーコストの増大が大きな悩みだったそうです。
課題の解決に向け、生産ラインの直上および周辺空間に、霧のいけうちの「ドライフォグ加湿システム」を導入しました。
平均粒子径が10μm以下という極めて微細な霧(ドライフォグ)の特性により、精密基板や装置を一切濡らすことなく、工場内の湿度を常に40%〜50%の適正値に安定させることに成功。静電破壊による部品不良が激減し、チップ飛びも解消されました。
また、重油を使った従来の蒸気加湿ボイラー運用から切り替えたことで、水を沸騰させる莫大な熱エネルギーが不要となり、加湿のランニングコストを68%(年間約570万円)削減。さらに、霧が蒸発する際の気化熱(断熱冷却効果)で周囲温度が2℃程度下がるため、排熱で冬でも冷房を入れる実装工場において年間約200万円の冷房コスト削減も同時に達成しました。空間の潤いによって従業員のインフルエンザなどの欠勤率も大きく低下し、現場の生産性向上に貢献しています。
半導体前工程や精密電子部品など、高度なクリーンルームが必要な工場では、不純物を飛散させない極めて衛生的な加湿が求められます。水道水に含まれるミネラル分が蒸発すると、ホワイトダスト(白い粉)となって室内を汚染し、不良品に直結するためです。
ここでは、クリーンルーム対応が求められる精密製造現場に導入された「純水対応型ドライフォグ加湿システム AirAKI(エアラキ)」の事例を解説します。
パワー半導体を製造する三社電機製作所では、クリーンルーム内の清浄度を保つために大量の空調換気を行っており、特に冬場は室内が激しく乾燥していました。
低湿度環境によって発生する静電気が浮遊チリ・ホコリを引き寄せてしまい、製品へのパーティクル吸着による品質低下リスクに直面。また、従来の蒸気ボイラー(A重油使用)では、経年劣化による配管の蒸気漏洩や度重なるメンテナンス、膨大な燃料コストと高い環境負荷(CO2排出量)が大きな課題となっていました。
導入したのは、霧のいけうちが提供する「純水対応型のドライフォグ加湿システム AirAKI」です。
不純物を取り除いた超純水を使用することでミネラル由来のホワイトダストを完全に防止し、クリーンルーム内の清浄度クラスを一切汚さずに安全な加湿を実現。霧の蒸発スペースを確保するために床下にて加湿を行う工法(床下加湿)を採用しました。
導入から丸5年間、ノズル詰まりなどのトラブルはほぼなく、現場の保守負担が軽減されています。さらに、部屋ごとに細かくゾーンを分けて制御をかけることで、従来の空調に比べて湿度の振れ幅を約2〜3%改善し、目標値の45%を精密に維持できるようになりました。非加熱式への切り替え(蒸気レス化)とヒートポンプ式チラーの連携により、空調システム全体で約67%のCO2削減に成功。「優良省エネルギー設備顕彰」を受賞するなど、品質対策と脱炭素を極めて高いレベルで両立させています。
工場用加湿器の導入は、設置条件と運用負荷の見極めが成否を分けます。
導入前に確認すべき主要チェックポイントを以下に整理します。
適切な湿度管理は、品質改善だけでなくインフルエンザやウイルス感染リスクの低減による稼働ロスの抑制にもつながります。作業者の欠勤が減ることで、現場の人員調整の負担軽減が期待されます。
また、エネルギー効率の良い加湿器を選ぶことで、省エネや環境負荷低減といったSDGs目標(7・8・9・12)への貢献にもつながり、法人顧客への強力な訴求材料(グリーン調達対応など)となります。
電子部品製造における加湿器は、品質・コスト・環境の3軸で工場運営に貢献する重要な設備です。
自社工場の湿度が目標値(45%前後)から離れている場合は、現場課題の棚卸しと並行し、工場用加湿器の導入検討・メーカーへの相談を進めることをおすすめします。
社内稟議を通す際は、「静電破壊や印刷不良の改善による歩留まり向上(再製造コスト削減)」と「空調機の電気代削減」の両面から試算を提示すると、経営層の判断材料として整理しやすくなります。
印刷・電子部品
プラスチック工場
なら
| 大きさ(mm) | 高さ1,995×幅700× 奥行450~ 高さ3,010×幅2,000× 奥行1,000 |
|---|---|
| 運転重量(kg) | 95~495 |
| 加湿量(ℓ/h) | 3.4~43.7 |
| 加湿可能な 目安面積(㎡) |
100~460 |
▼マウスオンすると、加湿方式の解説が出てきます
水分を含んだ空気を大風量で循環させ、広い工場内を行き渡るように均一に加湿。包装フィルムの印刷不良やプラスチック成形品の水跡・曇り、電子部品のショートを防ぐ。
空間をムラなく加湿することで静電気の帯電を抑制するだけでなく、工場内に浮遊する塵・パウダーを回収。包装フィルムへの白抜け(ピンホール)を防ぎ、プラスチック成形品の外観不良を低減する。
食品工場
製薬工場
なら
| 大きさ(mm) | 高さ550×幅380× 奥行285~ 高さ650×幅680× 奥行370 |
|---|---|
| 運転重量(kg) | 16~41 |
| 加湿量(ℓ/h) | 1.5~23 |
| 加湿可能な 目安面積(㎡) |
明記なし |
▼マウスオンすると、加湿方式の解説が出てきます
ステンレス内の電熱ヒーターで水を加熱・殺菌し、純度の高い蒸気だけを供給して衛生的に加湿。純水を使用するため、ミネラル分が残らず白い粉の浮遊・付着を防げる。
湿度センサーの検知値に応じて蒸気量を細かく制御し、設定湿度を一定に維持。粉末原料の固結や生地の乾燥を防ぎ、食品・医薬品の品質を保つ。
製材工場
木材倉庫
なら
| 大きさ(mm) | 直径540×高さ310 ~直径660×高さ330 |
|---|---|
| 運転重量(kg) | 8.8~9.2 |
| 加湿量(ℓ/h) | 12~54 |
| 加湿可能な 目安面積(㎡) |
明記なし |
▼マウスオンすると、加湿方式の解説が出てきます
高圧水による微細なミストを、天井から水平方向に噴霧・気化させることで、高さのある大空間を均一に加湿。木材を加工・保管するエリア全体を一定の湿度で管理できる。
滴りを防ぐノズルと配水ライン構造により、木材への水滴落下や局所的な過湿を防止。水滴による反りやカビなどの品質不良リスクを抑えられる。